2022年 王様のブランチランキング入りした話題の本のあらすじと感想

王様のブランチで紹介された本

2022年 4月~9月くらいに王様のブランチのランキングにも入っていた話題の本のあらすじと感想を書いてみました。

両手にトカレフ

あらすじ

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』の著者ブレイディみかこさんが書いた長編小説です。主人公は14歳の少女ミア。ミアの話と、彼女が読み始めたカネコフミコの自伝の内容とが交互に展開されます。ミアは精神的に不安定な母と内気な弟を家族にもち、経済的に困窮している14歳。頼りにならない母の代わりに弟の世話をしているため、クラスメイトと遊ぶ時間はほとんどありません。一匹狼のような存在ですが、独特な感性と文才がきっかけで、クラスの中心人物でありラップをしているウィルと親しくなっていきます。ソーシャルワーカーの介入や母の精神状態の変化に翻弄され、頼れる人もほとんどいない状況で、フミコの自伝と自分の状況を重ね合わせて必死に「今」を生き抜いていきます。

感想

ブレイディみかこさんの文章が好きで、今作も数時間没頭してあっという間に読み終えてしまいました。交互に展開されるミアとフミコのストーリーが面白いほどにリンクしており、推理小説ばりに息もつけない感覚でした。登場人物ひとりひとりの感情描写がリアルで、どうでもいいと思っていた人に興味をもつ瞬間や、自分よりも優秀な人へ向ける嫉妬心など、つい自分と重ね合わせて感情移入してしまいます。
「ノンフィクションの形では書けなかったけれど、書くべきだと思った」とブレイディみかこさんがいうように、ミアの家庭環境や社会的な背景は日本に生まれ育って暮らしているわたしには知らないことばかり。非常に勉強になります。また、フミコの自伝から、かつての日本の文化や家族愛とはなんなのか、というところも考えさせられる内容でした。
読んでいる間、物語の結末がハッピーエンドなのかバッドエンドなのかまったく想像がつかず、どきどきハラハラしながら読みました。

汝、星のごとく

あらすじ

瀬戸内の小さな島に住む17歳の櫂と暁海。ともに、親に難があり、色々なことに“諦め”を持ってしまっている高校生です。
そんな中でも、彼らはやりたいことがあり、花を咲かせようとするが、それもまた、親や小さな島の住人たちの価値観に阻まれることに。
それぞれのペースで成功やお金、世間的な地位を確立していきます。櫂は東京で一足先に成功しますが、暁海は瀬戸内の小さな島で母と二人で今までと変わらない生活を過ごし、距離的にも離れて過ごすうちに、お互いに大事にしているものや価値観のズレが生じてくるようになってきます。
二人の人生がもう一度交わることがあるのか。二人に影響を与え続ける人物たちの行方は。
17歳から32歳までの2人の15年間にわたる物語です。

感想

ページをめくる手が止まらず、この本を購入したその日のうちに読み終わりました。途中から、涙が止まりませんでした。主人公である櫂と暁海だけでなく、二人に影響を与えた登場人物の恋愛、生き方も強く描いた物語で、世間的に正しくない恋愛と頭では分かっていても、それぞれが自分の在り方と生き方を貫き通すのが、なんだかすがすがしい気持ちにもなります。最後まで読み終わった後、物語冒頭の一行めの意味が分かるため、もう一度読み返したくなるおもしろい仕掛けがある作品でした。ただの恋愛物語ではなく、自分をしっかり持ち、自立した人生を歩むことの大切さ、夢を追う大切さも考えさせられる作品です。世間の正しさではなく、自分の正義を貫いていく登場人物たちの姿に憧れを持ってしまいます。本を読み進めていると、物語に入り込んでしまう、不思議な感覚になりました。登場人物たちに会って話してみたくなりました。この本に出会えて良かったと心から思えます。

20代で得た知見

あらすじ

著者が20代に得たこと、出会った人たちを見て学んだことが書かれています。ふとした出会いや繋がりから、自分にないものに気づき、20代に出会った人によってたくさん得たがありました。生き方は人それぞれ、価値観も違います。20代という現実に目を向けて、今を生きることの大切さを感じさせてくれます。人との会話や聞いた言葉から、著者の思考がまとめられていて、その上で読者が考えられるような内容になっています。仕事、恋愛、生き方、20代で乗り越えられないことは、他人からの言葉で救われることもたくさんあります。20代を生きる人たちの共感と、違う価値観からの学びを得るための本です。自分では出会わないような人たちの言葉も、ときには耳を傾けることが必要なのかもしれません。

感想

20代の方には特に、この本一冊から人生の先輩からの学びが多くあるのではないでしょうか。20代は子供から大人になるまでの時期でもあり、現実を知って複雑な思いをすることが多くあります。失敗や挫折などを経験し、自分の生き方はこのままでいいのか、私もよく考えました。他人と比べてしまったり、人との出会いが多くなり、自分を見失うことも少なくありません。それでもこの本は、著者が知って学んだことから、20代の方は特に勇気づけられる一冊だと思います。いろんな生き方、その人なりの価値観が違う中で、自分はこのままでいいんだ、と救われるような言葉が多かったです。それに、自分だけではなく、20代を生きる全ての人たちがたくさん経験し、学び、それぞれ考えていることがあります。それを知った上で、自分も頑張ろうと思ったり、共に生きていきたいと感じたり。人間は助け合い、支え合い、刺激しあい、傷つけあい、生きているんです。
著者はまだ30代ですが、その後、30代の知見はどうなるのかな。なんて思いました。

その本は

あらすじ

大人気絵本作家のヨシタケシンスケさんと『火花』でアカデミー賞を受賞された又吉直樹さんが手を組んだ本です。
ある本好きの二人がそれぞれが「その本」を探す旅に出ます。
1年後、旅から戻った二人はたくさんの「その本」についての話を聞かせてくれます。
ヨシタケシンスケさんは、分かりやすい絵本で。又吉直樹さんは、そそるような文章で。
それぞれ違った「その本」は、短い話もあれば長い話もあり、1つ1つ全く違ったはなしをしてくれます。
怖いその本の話から、感動するその本の話、面白いその本の話までいろいろあります。
最後はどうなるのか、「その本」とは何なのか気になりますよね。
たくさんの本の物語を描いたこの本もまた、「その本」かもしれません。

感想

どんな本なのか題名だけでも気になっていました。
ヨシタケシンスケさんの絵が可愛く、絵本の様に見やすかったですし、又吉さんの文章力には驚かされました。
いろいろな「その本」の話が聞けるので飽きることなく読めました。
また、家にある他の本も「その本」として物語があるのでお二人に教えたくなりました。
怖い本から感動する本までさまざまあり、書かれている「その本」を本当に探したくもなりました。
母からお勧めされましたが、私も誰かにお勧めしたくなりました。
家にある本も、実家にある本も思い出が1つ1つあるのでぜんぶが「その本」ですし、これから新しく読む本もまた、「その本」になると思うとこれからもいろいろな本を読んでみようとも思いました。
一番印象に残るのは、私が小さい頃に母に読んでもらっていた絵本ですが、当時は意味が理解できず絵だけを見て楽しんんでいましたが、大きくなって読むと意味が理解でき感動しました。この「その本は」もまた、いまより年月がたって読むと理解できるページや思い出があるのだろうと思うと、ずっと持っておきたい宝物の様な存在でになありました。
この1冊の本にいろいろ考えさせられました。こんなに面白いと思った本は、初めてです。

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